法律・判例情報
推定相続人が遺言者より前に死亡した場合の遺言書の効力
事例
1 B及びXは、いずれもAの子であり、YらはいずれもBの子である。
2 Aは、平成5年2月17日、Aの所有に係る財産全部をBに相続させる旨を記載した条項及び遺言執行者の指定に係る条項の2か条からなる公正証書遺言をした。本件遺言は、Aの遺産全部をBに単独で相続させる旨の遺産分割の方法を指定するもので、当該遺産がAの死亡の時に直ちに相続によりBに承継される効力を有するものである。
3 Bは、平成18年6月21日に死亡し、その後、Aが同年9月23日に死亡した。
4 XがAの遺産につき法定相続分に相当する持分を取得したと主張して、Yら=Bの子=Aの代襲相続人らに対し、Aがその死亡時に持分を有していた不動産につきXが法定相続分に相当する持分を有することの確認訴訟を提起した。
Xの請求は認められるか?/それとも、Yらの代襲相続は認められるか?

嫌悪すべき心理的欠陥と瑕疵担保責任(民法570条)
事例
Xは,Yから土地2筆(本件土地)を買った。
Xは,本件土地上に以前存在していた建物(本件建物)において,殺人事件があったことを,売買後に知ったことから,本件土地には瑕疵があるとして,Yに対して売買代金の50%相当額の損害賠償を求めた。
なお,次のような事情がある。
・殺人事件は,本件売買の約8年半前に起きた。
・殺人事件は,女性が胸を刺されるというもので,当時新聞にも報道された。
・本件建物は,売買当時すでに取り壊されていた(更地での売買)。
・本件建物は,本件土地2筆のうち,3分の1強の面積である一方の土地上に存在した。
・本件土地付近には,多数の住宅が存在する。
・Xが,本件売買後,本件土地販売のために広告を出したところ,いったん本件建物が存在した東側の土地の購入を決めた者があったが,近所の人から殺人事件のことを聞き及び,キャンセルされた。Xは,その者に対して,他方の西側の土地の購入も勧めたが,隣の土地でも気持ちが悪いとして断られた。
上記Xの請求は認められるか。

フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約の無催告解除特約と民事再生手続
事例
リース業者Xは,飲食店業Yとの間で,多数回にわたりフルペイアウト方式でファイナンスリース契約を締結していた。各契約において,Yに整理,破産,和議,会社更生等の申立てがあったときは,Xは無催告解除できる旨の特約(本件特約)が付されていた。
Yが民事再生手続開始の申立てをし,同手続開始決定がなされたことを受け,Xは,各リース契約を解除する旨の意思表示をし(本件解除),リース物件の引渡しと約定の損害金(共益債権として)を求めた。 Xの請求は認められるか。
(参考)
民事再生法1条 この法律は,経済的に窮境にある債務者について,…当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。
同31条 裁判所は,…再生債権者の一般の利益に適合し,かつ,競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは,…第53条第1項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行の中止を命ずることができる。
同52条 再生手続の開始は,再生債務者に属しない財産を再生債務者から取り戻す権利に影響を及ぼさない。
同53条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権を有する者は,その目的である財産について,別除権を有する。
同148条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき第53条第1項に規定する担保権が存する場合において,当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは,再生債務者等は,裁判所に対し,当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。

事例)借地上の建物の根抵当権者である金融機関に対する事前通知を定めた、土地所有者の念書の効力
事例
次の事情のもとで、XのYに対する損害賠償請求は認められるか?
X:銀行、本件建物の根抵当権者
A:建物の所有者、根抵当権設定者、借地人
Y:土地所有者、土地の賃貸人
(事情)
① Aは、Xに対し、銀行取引に係る債権を担保するために、根抵当権を設定した。なお、Xは、
岡山県近辺における有数の金融機関であり、Aのメインバンクであった。
② 上記根抵当権設定に先立って、Xは、Aに対し、「借地に関する念書」と題する書面を交付
し、それに地主であるYの署名押印を得るよう求めた。なお、Yは、不動産の賃貸借を目的
とする会社である。
③ Yは、Aから上記念書を受領し、一部修正を求めた。
④ Yは、上記Yの求めにより修正された念書をAから受領し、これに署名捺印し、Aを介して
Xに交付した。
⑤ 念書の内容には、次のような条項が含まれていた。
「Aの地代不払い、無断転貸など借地権消滅もしくは変更を来すおそれのある事実が発生
した場合、Yは、Xに通知するとともに、借地権の保全に努める。」
⑥ 念書の受領に際して、Xが直接Yに対し、念書の内容や効果について説明をしたり、Yの
意思確認をしたことはなく、また、念書は1通作成されたのみで、写しがYに交付された
ことはない。
⑦ 念書の差し入れについて、YがXから対価を受領したことはない。
⑧ 平成17年12月、Aは、再生手続開始の決定を受けた。
また、このころAが開催した債権者集会で、再生の申立ての事実と、店舗閉鎖の事実が
説明され、Xは、それらの事実を認識した。
⑨ Aは、平成18年1月分以降、地代を支払わず、平成18年6月、Yは、Aに対し、建物収去
土地明渡請求訴訟を提起した。
⑩ Xは、同訴訟継続中の平成18年9月、Yから訴訟告知を受けて、初めて地代不払いの
事実を知った。
⑪ 同年12月、同請求認容判決が確定し、翌年4月、同判決に基づいて建物が収去され、
根抵当権が消滅した。

遺産の評価時期(遺産評価の基準時)、特別受益の評価の基準時、遺留分算定の基礎財産の基準時
1 遺産の評価時期(遺産評価の基準時)
遺産を具体的に分配する際の財産の評価は、遺産分割時を基準とします。
つまり、相続開始から、遺産分割までの間に、遺産を構成する財産の価値(時価)に 変動があった場合には、具体的に遺産分割をする時点の価値で、分配することになります。

遺産を確保(保全)する方法
遺産分割協議が成立(終了)する前に、特定の相続人によって遺産が処分され、消失してしまうと、他の相続人の権利が害され、また、協議も無駄となってしまい、取り返しのつかないことになりかねません。
では、そのような事態を避けるため、遺産の消失を防止するには、どのような方法があるでしょうか。

寄与分の具体的な計算方法
遺産分割の際には、どうやって計算するのか?
・まず、「寄与分」を相続財産からマイナスします。このマイナスした後の財産を「みなし相続財産」と言います。
・次に、「みなし相続財産」を基礎に、各相続人の相続分を算定します。遺言で相続分の指定がなければ、法定相続分で割ることになります。
・最後に、寄与者だけ、「寄与分」の分を自己の相続分にプラスします。
では、具体例を見てみましょう。

寄与分
「寄与分」とは何か?
相続人の中に、被相続人(の財産)に対して特別の貢献(寄与)をした人(「寄与者」と言います)がいた場合に、それをまったく考慮せずに遺産を分けると相続人間で不公平が生じます。
そこで、民法は、遺産分割の際にその特別の貢献を考慮し、清算する制度を規定しました。
簡単に言うと、特別の貢献の分だけ遺産を多く分けてもらえるという制度で、その多くもらえる分を「寄与分」と言います。
