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フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約の無催告解除特約と民事再生手続

事例

 リース業者Xは,飲食店業Yとの間で,多数回にわたりフルペイアウト方式でファイナンスリース契約を締結していた。各契約において,Yに整理,破産,和議,会社更生等の申立てがあったときは,Xは無催告解除できる旨の特約(本件特約)が付されていた。

 Yが民事再生手続開始の申立てをし,同手続開始決定がなされたことを受け,Xは,各リース契約を解除する旨の意思表示をし(本件解除),リース物件の引渡しと約定の損害金(共益債権として)を求めた。  Xの請求は認められるか。

 

(参考)

民事再生法1条 この法律は,経済的に窮境にある債務者について,…当該債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図ることを目的とする。

同31条 裁判所は,…再生債権者の一般の利益に適合し,かつ,競売申立人に不当な損害を及ぼすおそれがないものと認めるときは,…第53条第1項に規定する再生債務者の財産につき存する担保権の実行の中止を命ずることができる。

同52条 再生手続の開始は,再生債務者に属しない財産を再生債務者から取り戻す権利に影響を及ぼさない。

同53条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき存する担保権を有する者は,その目的である財産について,別除権を有する。

同148条 再生手続開始の時において再生債務者の財産につき第53条第1項に規定する担保権が存する場合において,当該財産が再生債務者の事業の継続に欠くことのできないものであるときは,再生債務者等は,裁判所に対し,当該財産の価額に相当する金銭を裁判所に納付して当該財産につき存するすべての担保権を消滅させることについての許可の申立てをすることができる。

1 解答

 

認められない  東京高裁平成19.3.14判決(判タ1246,p337~)  (上告,上告受理申立て)

 

2 理由

 リース料債権につき遅滞がなくとも,民事再生手続によらずに,リース業者がリース物件を取り戻せることになると,民事再生の目的である「債務者とその債権者との間の民事上の権利関係を適切に調整し,もって当該債務者の事業又は経済生活の再生を図る」ことが困難になる。そうすると,本件特約は民事再生法の趣旨・目的を害するもので,これを無効と解するのが相当である(最高裁昭和53年(オ)第319号,同57年3月30日第3小法廷判決・民集36巻3号484頁)。

フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約は,実質的には金融を目的とし,リース物件の利用権がリース料支払債務の担保になっており,リース契約の解除は実質,担保権の実行の意味があるところ,民事再生手続においては,担保権は別除権として,民事再生手続によらずに行使できるとされているところであるが(民事再生法53条),同時に,民事再生法は,事業に必要な物件等については,担保権の行使についてもこれを制約することを認めているのであり,本件特約による解除が実質担保権の行使であるとしても,それが無制約に行使できるとなると,やはり民事再生法の趣旨,目的を害するものといわなければならない。

※ なお,本件解除時にすでにリース料を遅滞していた一部の物件については解除が有効であるとして,その物件についてのみ,損害金を共益債権にあたるとした(一部認容)。

※ 本件の原審は、本件特約を別除権行使の方法を定めたものとして有効であるとした。

(参考)

最高裁57年3月30日第3小法廷判決は,所有権留保付売買契約の買主に会社更生手続開始の原因となる事実が生じたことを解除事由とする特約について,会社更生手続の趣旨及び目的を害するものとして無効であるとした。

 

掲載日:2012年5月12日
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