「不動産」に関連する法律・判例情報
定期建物賃貸借の期間満了後における終了通知
1 問題
定期建物賃貸借契約において、賃貸人は、その期間満了の1年前から6ヶ月前の間に
賃借人に対して、期間満了により契約が終了することを通知しなければなりません
(借地借家法38条4項)。
この「期間満了の6ヶ月前」を経過して、賃貸人が賃借人に終了することを通知したとき
は、その通知から6ヶ月を経過すると、賃貸人は契約の終了したことを賃借人に主張する
ことができます(つまり、退去を請求できる。)(同法38条4項但書き)。
では、「期間満了の6ヶ月前」を経過し、さらに期間満了日を経過してから、賃貸人が契約
の終了を通知した場合、その通知から6ヶ月を経過すると、賃貸人は、上の場合と同じように、
契約の終了を賃借人に主張できるのでしょうか?

賃借権と抵当権(短期賃貸借と明渡猶予制度)
第1 抵当権と賃借権の優劣
抵当権の実行による不動産の競売の場合に、その不動産の賃借人が競落人(買受人)に
対して賃借権を主張することができるか=賃借権を対抗できるか(つまり、競売の後も継続
して借り続けることができるか)という問題です。
なお、土地を含めるとやや複雑になるので、ここでは建物ということを前提に考えます。
これは、「対抗要件の先後」で判断されます。
つまり、賃貸借契約を締結して引渡しを受けた(鍵を受け取った)日と抵当権の設定登記が
された日と、どちらが早いかで決まる(早いほうが優先する)ということです。
賃貸借契約を締結して引渡しを受けたのが、抵当権の登記よりも早ければ、賃借人は
買受人に対しても賃借権を主張して従前と同様に借り続けることができます。

短期賃貸借と明渡猶予制度に関する具体例
具体例A:短期賃貸借として保護されるケース
※制度の解説については、こちら「賃借権と抵当権(短期賃貸借と明渡猶予制度)」
平成10年10月10日 抵当権設定登記
平成15年1月15日 契約(期間3年)・引渡し
平成18年1月15日 更新(期間3年)
平成21年1月15日 更新(期間3年)
平成21年9月19日 抵当権実行による差押え
平成22年12月15日 買受人による代金納付(所有権移転)
この場合、平成21年1月15日の更新は差押え前ですから、短期賃貸借として認められます。
つまり、期間3年の契約ですから、平成21年1月15日からの3年間である平成24年1月14日
まで契約は存続する(その日までは退去しなくて良い)ということになります。

引渡命令
不動産の買受人(競落人)が、競売によって所得した不動産に対する権利を迅速に確保する
ため、民事執行法には、引渡命令という制度が用意されています。
これは、簡単に言えば、
競売手続終了後、競売不動産を、正当な権利なしに占有している者の占有を
迅速に排除するための制度
です。
なお、申立ては買受人にのみ認められており、買受人から不動産を譲り受けた買主は申立て
をすることができません(ただし、買受人が引渡命令を裁判所から得た後に不動産を譲渡した
場合、買主が執行することは可能です。)。

賃貸人の民事再生と賃貸借契約(賃借人の立場)
民事再生手続きを理由に賃貸借契約を解除されること(明渡しを求められること)はありません。したがって、賃貸借契約は継続します。
賃料の支払先は、賃料が差し押えられたり譲渡されたりしない限りは、従前と同様の方法で賃貸人に支払います。

定期借家契約の説明書面の独立性
問題
定期建物賃貸借契約を締結する際、借地借家法38条2項の規定によって、賃貸人から賃借人に交付(渡す)ことが要求されてい書面(説明書面)は、契約書と別個の独立 した書面である必要があるか?
定期建物賃貸借契約の契約書を公正証書で作成し、その中に、「この契約は更新が なく期間の満了によって終了する、ということを記載した書面を交付して説明したことを、お互いに確認します」といった趣旨の記載があった場合に、そのような契約は、定期建物賃貸借契約として有効か?
