住所のみにより特定された「不動産」の遺贈の対象
住所のみにより特定された「不動産」の遺贈の対象
遺言には、いわゆる住居表示(住所)が記載され、その「不動産」を「Xに遺贈する」とされていた。
その住居表示(住所)は、土地の地番や建物の家屋番号とは異なる。
当該遺言における「不動産」が「建物」のみを意味するのか、「土地及び建物」の両者を意味するのか、という解釈について、相続人間で争いになった。
解答
「建物及び土地」の両者を意味します。(最高裁判決平成13年3月13日)
最高裁は、遺言において、遺贈の目的物について「不動産」とのみ記載した場合、土地を対象から明示的に排除してはいないことなどから、「土地及び建物」を一体として遺贈する意思を表示したものと解釈すべきだ、と判断しました。
なお、裁判では、他に、その土地及び建物が、相続人において経営されていた会社の事業のために必須であったことなどの事情・経緯等が主張されましたが、最高裁は、遺言書の記載それ自体から、遺言者の真意が解釈できる場合には、そういった遺言書に表れていない他の事情・経緯等をもって、遺言の内容を解釈するための根拠とすることはできない、と判示しています。
一般的に、遺言書の記載が一義的に明確ではない場合、遺言書には必ずしも出ていない様々な事情を拾い上げて、遺言者の真意を探求すべきとされています(参考判例:昭和58年3月18日)が、前記平成13年の判例においては、あくまで遺言書の記載から真意が導き出される場合には、遺言書の記載をもって解釈すべしとの重要な判断基準が示されています。
掲載日:2018年4月28日