遺留分減殺の方法・順序について
遺留分減殺請求の対象
遺留分減殺請求の対象となるのは、①遺贈、②相続開始前1年間になされた贈与、③遺留分権利者を害することを知ってなされた贈与、④不相当な対価をもってした有償行為及び⑤相続人に対する特別受益などです。
遺贈と贈与(生前贈与)がある場合の順序
遺贈と贈与(生前贈与)がある場合、まず遺贈が減殺の対象となります。
複数の遺贈がある場合、目的の価額に応じて割合的に減殺されることとなります(民法1034条ただし書)。
なお、遺留分権利者には、減殺の目的物を選択する権利はないとされています(徳島地判昭和46.6.29)。
共同相続人に対する遺贈を減殺すると当該共同相続人(受遺者)の遺留分を侵害することになる場合の処理
共同相続人に対する遺贈を減殺する際に、当該共同相続人(受遺者)の遺留分を侵害することとなる場合には、当該共同相続人(受遺者)の遺留分額を超える部分のみが、減殺の対象となることとされています(最高裁判決平成10.2.26)。
死因贈与について
死因贈与については、遺贈の後、贈与(生前贈与)の前に減殺するというのが、近時の多数説とされています(東京高判平成12.3.8)。
つまり、遺贈→死因贈与→贈与(生前贈与)という順序となります。
複数の贈与がある場合の減殺の順序
遺留分減殺請求の対象となる贈与が複数ある場合、新しい贈与から、順次、古い贈与に遡っていくことになります(民法1035条)。
先後関係の判断は、履行(登記手続き)のときではなく、契約時とするのが最近の多数説とされています。
なお、同時になされた贈与については、民法1034条の規定を類推適用し、目的の価額に応じて割合的に減殺することと考えられています。
相続分を指定する内容の遺言により遺留分を侵害された場合
相続分を指定する内容の遺言によって遺留分を侵害された場合、同相続分の指定に対し、遺留分減殺請求をすることができます(最高裁決定平成24.1.26)。
効果としては、遺留分を侵害する範囲で、相続分の指定が効力を喪失し、遺留分を超える部分の割合に応じて、指定相続分が修正されることになります。