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預金契約の成立時期と破産開始決定

事例

 以下の事実関係において,A社管財人XのY銀行に対する上記400万円の支払請求は認められるか?

(前提事実)

① A株式会社は,Y銀行の夜間金庫に,9月12日(金)のY銀行閉店時間後~翌営業日である9月16日(月)の夜間金庫開扉時間8時35分までの間に,400万円を投入して預け入れた。
② A社は,9月16日午前9時,破産手続開始決定を受けた。
③ Y銀行は,同日午前9時19分,上記400万円について入金処理を行った。
④ Y銀行は,上記400万円の預金債務とA社に対する貸付金債権とを相殺する旨の意思表示をした。
⑤ Y銀行の夜間金庫規定には,
 ・投入された現金等は,銀行の営業時間開始後,所定の手続により確認の上,所定の口座に入金処理する。
 ・入金日付は,投入日の翌営業日となる。
 という趣旨の規定がある。
⑥ 夜間金庫への投入により,400万円がY銀行の支配下に入ったことには争いがない。

 

解答と理由

(解答)

認められない。  大阪高裁平成20.5.29判決(確定)(金融法務事情1845,p58)

(理由)

 夜間金庫は,銀行の顧客サービスの一つであるから,夜間金庫に預け入れられた金銭に関する法律関係については,銀行と顧客との契約の内容によって定められるところ,夜間金庫規定3条には,前提事実⑤の規定があるから,夜間金庫に投入された現金等については,翌営業日に指定の口座に入金処理する手続きをしたときに,預金契約が成立する。 したがって,預金契約が成立するのは9月16日午前9時19分であって,それまでは,入金袋に封入された特定物としての単純寄託契約が成立しているに過ぎない。

 そうすると,預金払戻債務は破産開始決定後に成立した債務となるから,Y銀行の相殺は,破産法71条1行1号に抵触し,無効である。

 

 

掲載日:2012年5月12日
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