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引渡命令

    不動産の買受人(競落人)が、競売によって所得した不動産に対する権利を迅速に確保する
ため、民事執行法には、引渡命令という制度が用意されています。  

    これは、簡単に言えば、
               競売手続終了後、競売不動産を、正当な権利なしに占有している者の占有を
    迅速に排除するための制度

です。  

    なお、申立ては買受人にのみ認められており、買受人から不動産を譲り受けた買主は申立て
をすることができません(ただし、買受人が引渡命令を裁判所から得た後に不動産を譲渡した
場合、買主が執行することは可能です。)。

時 期

    この制度を利用することができるのは、原則として、代金納付から6ヶ月以内です。

    例外:明渡猶予制度の適用がある場合には、代金納付から6ヶ月経過後の3ヶ月間となります。

    さらに例外:明渡猶予制度の適用がある場合であっても、買受人が占有者に対して相当の期
間を定めて賃料相当額の催告をしたのに占有者が支払わなかった場合には、「6ヶ月経過後」
という制限はなくなり、即時、申立てをすることができるようになります。

相手方

     上に書いたように、「正当な権利のない占有者」です。

具体的には、

         ο その不動産の前所有者

         ο 実行された抵当権の債務者

         ο 所有者であった法人の代表者や従業員

         ο 競売のための差押え後に占有を開始した者

         ο 抵当権に劣後する賃借権 (→賃借権と抵当権を参照)
                 ただし、短期賃貸借の適用を受ける賃借人は、代金納付から6ヶ月以内にその
             契約期間が満了する場合に限られます。
                 なお、明渡猶予制度の適用を受ける場合は、代金納付から6ヶ月経過後の3ヶ月
             間に限られます。

          ο 執行妨害目的の占有者

          ο 使用借権者

          ο 不動産の賃借人が当該不動産に自己の債務を担保するために抵当権を設定
              し、そ
の抵当権が実行された場合の、当該賃借人 
            
(東京高裁平成7年10月13日決定)

たとえば、「自分が真の所有者だ」と主張し、競売による所有権移転を無視して当該不動産の
占有を続けようとする者や、「前の所有者から永続的な使用を許されている」などと主張して
いる者などを、迅速に排除することができるのです。  

なお、通常、競売の「物件明細書」の記載で、引渡命令の対象となる相手方かどうか、判断
ることができます。

時 間 

    引渡命令の制度を利用した場合、占有者を排除するまでにどの程度の時間がかかるか。

    ケースバイケースですので、一概には言えませんが、だいたい申立てから1ヶ月ないし2ヶ
月程度
かと思います。通常は、買受人(あるいは、その代理人の弁護士)の説得に応じて、
任意に明け渡すことが多いでしょう。

掲載日:2011年10月16日
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